DocumentaLy

ちょっと前の日の夕方、同期で仲の良いN君にトイレで「死んだ目をしているね」と言われたんだ。死んだ目!? 死んだ魚のような目? 死んだサンマのような目? 死んだシャケのような目? サンマより、シャケの方が好きだな。オーマイガッド。そんなに僕は疲れた表情をしていた? そんなに僕は精力なさげな顔つきだった? 赤ひげ薬局のお世話にはならないぞ。年をとっても明石家さんまぐらい元気でいたい。ぴっちぴちのサンマでいたい。

教えてくれ、姫! 元気を出す方法を! オロナミンCより元気ハツラツな僕のはずなのに、傍目には僕は元気がなく見えるらしい…。

姫は優しく答える。「あなたの得意なことを3つ考えてみて」。

得意なこと?
そうだな・・・

まず、便のお通じがいいこと。

次に、「おはようございます」とあいさつができること。

最後に、一人でカラオケに行っても恥ずかしくないこと。
誰も見ていない中、神聖かまってちゃんの「ロックンロールは鳴りやまないっ」を大声でシャウトするのさ。

疲れているんだろう、僕は。
笑って、笑って、笑ってたのに泣いていたんだ。

何事にも不慣れな身を世界にアジャストすることでどっと疲れる。
スピッツはビギナーのままで歩き続けられるよ、と歌ったけれど、ビギナーは小さなことにもくよくよするんだ。

だけど、勝間和代のような一直線なタフさやガッツはうざったい。
迷っていたい。もう事件は迷宮入りなのだ。金田一万が一迷宮入りしてるのだ。

夜に一人の部屋でビールを飲みながら迷宮に籠る。
疲れを喉の奥へ押し流し、何も周りが見えない孤独におびえている。

カラオケに行ってサカナクションを熱唱すればこんなことは忘れるのかもしれない。その時、隣に誰かいればこんなことは忘れるのかもしれない。こんなことを考えるのは、バッハの旋律を一人聴いたせいかもしれない。どうしても叫びたくて叫びたくて僕は泣いているんだよ。

ヅラの係長の視線がさっきからこちらを気にしている。僕を心配してくれているようだ。

「もう今日の残業はいいですよ」
ヅラが言う。

そういう時は、外に出て友人とぱぁっと飲んでくればいい。ヅラが暗にそう諭しているようだった。
僕は家を出る。コンビニの明かりに吸い込まれる。

姫が迷宮から一歩踏み出す。僕は黙ってそれを見る。
行かないで、見渡して。羽ばたいて、口ずさんで、いつか。